橘玲

スーパーZIPに住む新上流階級はマクドナルドのようなファストフード店には近づかず、アルコールはワインかクラフトビールでタバコは吸わない。アメリカでも新聞の購読者は減っているが、新上流階級はニューヨークタイムズ(リベラル派)やウォールストリートジャーナル(保守派)に毎朝目を通し、『ニューヨーカー』や『エコノミスト』、場合によっては『ローリングストーン』などを定期購読している。 また彼らは、基本的にあまりテレビを観ず、人気ランキング上位に入るようなトークラジオ(リスナーと電話でのトークを中心にした番組)も聴かない。休日の昼からカウチでスポーツ番組を観て過ごすようなことはせず、休暇はラスベガスやディズニーワールドではなく、バックパックを背負ってカナダや中米の大自然のなかで過ごす。 マレーは、これが新上流階級がスーパーZIPに集住する理由だという。彼らの趣味嗜好は一般のアメリカ人とまったく異なっているので、一緒にいても話が合わない。「自分に似たひと」と結婚したり、隣人になったほうがずっと楽しいのだ。 アメリカでは民主党を支持するリベラル派(青いアメリカ)と、共和党を支持する保守派(赤いアメリカ)の分裂が問題になっている。だが新上流階級は、政治的信条の同じ労働者階級よりも政治的信条の異なる新上流階級と隣同士になることを好む。政治を抜きにするならば、彼らの趣味やライフスタイルはほとんど同じなのだ。